診療案内

頭痛

頭痛の多くは脳に明らかな異常がないのに起こる「一次性頭痛」ですが、まずはクモ膜下出血、動脈瘤、椎骨動脈解離、脳腫瘍等の命に関わるような疾患、放置していてはいけない疾患を鑑別する必要があります。片頭痛、緊張型頭痛、群発頭痛等の慢性頭痛に対しては適切な治療法、予防法を検討していきます。ご自分に合った薬剤の選択と内服法、生活習慣の改善等を考えていきましょう。

めまい・ふらつき

脳からくるものが多いと思われがちですが、内耳性のもの、血圧変動、貧血、薬剤性、不整脈、心因性のもの等、めまいの原因は様々です。もちろん脳疾患の鑑別は重要ですが、脳に異常が見られない場合は原因を検討していき、適切な治療法をみつけていきます。普段からご自分でめまいの起こる状況を記録しておくことも原因を探る一助になります。

症状

耳からくるめまい
耳鳴りがする、聞こえにくい、閉塞感がある、天井が回るようなめまいがする
脳からくるめまい
頭痛を伴う、物が見えにくい、歩くとフラフラする、ろれつが回らない、フワフワ浮いた感じがする

考えられる疾患

脳卒中(脳梗塞、脳出血)、メニエール病、突発性難聴、心疾患、貧血

しびれ

手足のしびれの原因としては、感覚野・視床・脳幹等の脳病変以外に、頚椎や腰椎の脊椎・脊髄疾患、末梢神経(手足の神経そのもの)障害の可能性もあります。しびれの場所、随伴する症状等に応じて原因を予測、精査していきます。

危険な前兆症状

□左右対称のしびれ
□両手両足のしびれ
□顔半分、体半分だけのしびれ
□手指などの麻痺を伴う
□頭痛、めまいを伴う
□フラフラしてまっすぐ歩けない
□ろれつが回らない

考えられる疾患

脳出血、脳梗塞、一過性脳虚血発作、脳腫瘍、糖尿病、椎間板ヘルニア、手(足)根管症候群

もの忘れ(認知症)

加齢とともにある程度の記憶力の低下、物忘れ等の症状がみられることはなかなか避けられません。しかしご本人に自覚がないまま会話や行動自体を忘れてしまったり、明らかな進行傾向がみられるような場合、また性格変化等の症状を伴う場合は認知症の可能性があります。検査画像のみでは認知症の確定診断はつきません。症状と合わせ早期発見することにより症状の改善傾向、周辺症状の緩和が得られる可能性があります。また慢性硬膜下血腫、脳血管性認知症、正常圧水頭症等の治療可能、進行予防可能な疾患の可能性もあります。「周りからみて今までと違う」、「徐々に進行している」と感じたときは迷わずご相談ください。

症状

□物忘れが以前より明らかに増えた
□買い物や料理など、今までできていたことができなくなってきた
□数分前のことを忘れ、同じことをしたり言ったりする
□自分の家に帰れないなど、慣れた道でも迷う
□会話が噛み合わない
□怒りっぽくなって、服装などへの関心がなくなった

三叉神経痛

片方の顔面、歯茎等に突発的な疼痛が何度も出現する病気です。多くの場合、三叉神経という脳神経に屈曲した脳の動脈が接触、刺激することが原因となります(MRI検査で確認できます)。カルバマゼピンという内服薬がいったんは有効ですが、量を増やしても徐々に効かなくなり、手術治療を勧められる場合が一般的に多いようです。ただ生活指導と内服法を変えることで少量でも劇的に効果が強まり、中には手術しなくても完治する方もみられますので、一度ご相談いただければと思います。また比較的副作用の多い薬ですので、必ず少量から慎重な投与の上、それでも副作用が出現した際は他剤への変更が必要となる場合もあります。

顔面けいれん

片方の顔面が発作的、持続的にピクつく病気です。三叉神経痛の場合と同様に、顔面神経という脳神経に屈曲した脳の動脈が接触、刺激することが主な原因となります。ただしこちらの病気は残念ながらカルバマゼピン等内服薬の劇的な効果は期待できません。ボツリヌス注射治療、手術治療を考えることとなります。ただし命にかかわる病気ではありませんし、また数ヶ月単位の症状の変動がみられますので、症状の程度、ご本人の考え等で治療法は決まることとなります。また似たような症状の病気としては眼瞼けいれん、ミオキミア等がありますが、それぞれ治療法が異なりますので鑑別が必要です。

頭部外傷

頭部打撲、頭部外傷の場合、重要なのは受傷時の状況(程度)とその後の神経症状です。それでもやはり頭部CT等の検査を行うのが安心ではあります。ただしお子さんの場合(特に乳幼児)は、検査中の体動等から検査自体が難しいこともあり、総合的に診断する必要があります。
60歳以上の方の場合は、直後は異常なくても頭部打撲後2週間~1,2ヶ月して発症する慢性硬膜下血種という病気がしばしばみられます。記憶障害、歩行障害等の神経症状が典型的ですが、診断には頭部CT検査が有用で、30分程度の手術で治る病気です。

危険な前兆症状

大人の場合
□意識がもうろうとしている
□言動がおかしい
□吐き気、嘔吐がある
□強い頭痛がある
□手足のしびれ、麻痺
□打撲から数ヶ月以内での頭痛、めまい、片麻痺、物忘れ
子供の場合
□泣き方が弱い、ぐったりしている
□寝入ってしまう
□吐き気、嘔吐がある
□意識がもうろうとして反応が悪い
□けいれんする
□動きがおかしい

考えられる疾患

脳挫傷、急性硬膜下血腫、慢性硬膜下血腫 など

意識消失

数秒~1,2分間急に意識を無くしたが、意識が戻ってからは特に他の症状がみられない、といったことがあります。脳の病気を心配され脳外科を受診される方も多いですが、実際は自律神経調整障害からの一過性血圧低下による症状が一番多いと思われます。特に飲酒後、入浴後、起立時、排尿後等(まさに温泉旅行中の状況です)に起こるものは可能性が高いです。可能であれば気付かれた方が手首で脈を触知したり、家庭血圧計で血圧を測定してみてください。他の原因としては不整脈、てんかん発作等によるものもありえます。特に不整脈が原因の場合はそれが命に係わる危険な不整脈である可能性もありますが、普段の心電図検査では見逃される可能性もありホルター心電図検査が必要です。当院では1週間装着型の長時間心電図記録器を導入しています。これにより通常の24時間心電図と比較し約2.5倍の検出率が期待できます。

脳卒中

脳卒中は大きく脳梗塞、脳出血、くも膜下出血に分けられます。いずれも長期の入院治療が必要になったり、後遺症が残ったり、さらに命に係わる状況にもなりえるものです(当院には入院設備はございませんので、そのような状況の方に対しましては、しかるべき施設、病院と連携、連絡をとり入院の手配を相談させていただきます)。

脳卒中の種類

脳卒中とは、脳の血管が破れたり詰まったりして、脳に何らかの障害が起こってしまう脳血管障害のことで、脳の血管が破れた場合は「脳出血」「くも膜下出血」、脳の血管が詰まってしまった場合は「脳梗塞」に大別されます。さらに脳梗塞は、「ラクナ梗塞」「アテローム血栓性梗塞」「心原性塞栓症」に分類されます。
脳梗塞
脳梗塞とは脳を栄養する血管が閉塞し、血流が途絶え脳が壊死を起こす病気です。原因として主なものはやはり動脈硬化です。大動脈弓や頚部動脈、脳動脈の動脈硬化により血管壁が肥厚し、血管内腔の狭窄や閉塞をきたします。また血管壁の一部に血栓を形成し、その抹消に流れ塞栓をきたすこともあります。一概には言えませんが、大きな血管に起こったものをアテローム硬化性(もしくは血栓性)梗塞、小さな血管(穿通枝)に起こったものをラクナ梗塞といいます。
脳梗塞自体はMRI検査で診断がつきますが、頭部頚部の血管を調べるにはMRA検査、エコー検査が有用です。進行、再発予防治療として、抗血小板剤(いわゆる血液サラサラ薬)の内服が必要ですが、動脈硬化危険因子である高血圧、高脂血症、糖尿病等の管理、禁煙等がそれ以上に大切です。しばしばMRI検査で無症候性脳梗塞(かくれ脳梗塞)が見つかることがありますが、いたずらに抗血小板剤を開始するのではなく、動脈硬化危険因子の管理の方がむしろ重要だと考えます。
もう一つ忘れてはいけないのが心臓の不整脈が原因で起こる心原性脳塞栓で、実は脳梗塞の約3割を占めます。心房細動という不整脈により心臓内に血栓を形成し、それが主に脳の血管に飛んで詰まることで発症します。大きな血栓が大きな血管に詰まる事が多いため、3つタイプの中で症状が重篤化しやすいわけですが、心房細動自体は自覚症状に乏しいことも多いためご自分でも気付かないうちに心房細動を発症している可能性もあります。また発作性心房細動といい、普段はみられないがある時間だけ心房細動に変わることも多く、通常の心電図検査では見逃される事も多いと思われます。やはりホルター心電図検査が有用ですが、通常の24時間型と比較し、1週間装着型の長時間心電図記録器を使用することにより心房細動の検出率向上が期待できます。その場合は血栓形成予防の為、抗凝固薬というお薬の内服を検討します。
少し面倒くさいお話になりましたが、ご自分であるいはご家族で時々手首の脈を触知してみて、脈の乱れがあればホルター心電図を検討されてはいかがでしょうか。
脳出血
脳出血とは脳の血管が切れて、脳内に出血する病気です。出血の場所、大きさにより症状も様々ですが、大きな出血になると短時間で重度の意識障害を来し死に至ることもあります。原因の9割を占めるのが高血圧で、長年の高血圧状態によりまずは小さな血管(穿通枝)が破綻し、破れて出血します。脳出血の予防で一番重要なことは高血圧の管理です。脳出血の診断はCT検査で十分わかりますが、MRI検査を行うと脳出血の前触れである「かくれ脳出血」を調べることができます。
因みにこの穿通枝という血管は、さきの脳梗塞の欄でお話しましたラクナ梗塞の原因となる血管です。つまり高血圧等により破綻した穿通枝が破れれば脳出血、詰まればラクナ梗塞という全く正反対の病気になってしまします。従いまして、MRI検査等で無症候性ラクナ梗塞(かくれ脳梗塞)が見つかった場合に、安易に抗血小板剤(血液サラサラ薬)を開始することは、逆に穿通枝からの出血の危険性を高める結果にもなってしまいます。やはりまずは高血圧等危険因子の管理を一番に考えることが重要と思われます。
くも膜下出血
くも膜下出血とは主幹動脈という脳内の2~5mm程度の太い血管に出来た動脈瘤という血管の瘤が破裂して起こる病気です(因みに穿通枝は0.1~0.2mm程度の太さです)。この血管は脳の中ではなく、脳と脳の隙間(くも膜下腔)を走行していますので、破れても通常は脳内出血とはならず、くも膜下腔に出血します。そのかわり太い血管から出血しますので、急激な頭蓋内圧亢進を来し、突然の激しい頭痛とともに意識障害を来します。約1割の方はそのまま亡くなりますが、多くの場合はそれでもかろうじて自然止血します。治療は再破裂の予防の為、開頭クリッピング術か血管内コイル塞栓術等の緊急手術しかありません。状態が悪いと手術できない場合もあり、死亡率は30%以上という怖い病気です。
脳動脈瘤は、MRA検査等を行うと5%程度の方に認められると言われており、通常動脈瘤自体による症状はみられず、未破裂脳動脈瘤と呼びます。この未破裂脳動脈瘤をどう考えるかが問題となります。動脈瘤のある方全てがくも膜下出血を発症するわけでもありません。動脈瘤の形、大きさ、場所等でも破裂しやすさは異なりますが、一般的には1%/年程度の破裂率と言われています。サイズも小さく形もいびつではないものに対しては、血圧管理等を行いMRA検査等経過観察をしていくのが通常だろうと思われます。破裂しやすそうだと思われるものに対しては、破裂予防の為の手術治療も検討していくわけですが、治療には危険性もあり慎重な判断が必要です。得られた情報をもとにその都度ご本人と相談しながら判断していくしかありません。また他の医師の意見を聞いてみることも重要と思われます。

危険な前兆症状

□急な激しい頭痛、めまい
□急な手足のしびれ
□顔を含む半身だけに起こるしびれ
□急な言語障害
□視野が半分になったりものが見えにくい
□フラフラしてまっすぐ歩けない
□吐き気、嘔吐